2026年5月、GoogleはAI検索の本格稼働を迎えた今、立て続けに重要な方針を発信しています。
- 「AIを最善の方法で活用せよ」という助言
- 2026年3月コアアップデートによるアグリゲーター(※)の可視性低下
- AIが実体験コンテンツをより重要にするというメッセージ
- 「キーワード断片化」という検索行動の構造変化。
これら4つの動きに共通するテーマは一つです。
「AIがコンテンツを平準化する時代に、何が生き残るか」
本記事では、これらを横断的に読み解き、日本のデジタルマーケティング責任者が今すぐ取り組むべき戦略とアクションを整理します。
【この記事のポイント】
- GoogleのNikola Todorovic氏(ソフトウェアエンジニアリングディレクター)とMartin Splitt氏が「AIを最善の方法で活用せよ」と提言。ただしその本旨は「AIでコンテンツを量産せよ」ではなく「AIを使ってデータ・競合・ユーザーインサイトをより深く理解せよ」という点にある。
- 2026年3月コアアップデート(3月27日〜4月8日)でアグリゲーターが急落。ブランドサイト・政府機関が浮上。Googleは「その情報を語る権威(コンテンツオリジネーター)」を優先するという明確な意思を示した。
- GoogleのLiz Reid氏(Bloomberg Odd Lots ポッドキャスト)が「キーワード断片化」を説明。ユーザーは以前から複雑なニーズを持っていたが、技術的制約でキーワードに圧縮せざるを得なかった。AI検索の普及でその制約が外れ、検索がより「人間らしい」問いかけに近づいている。
- AIが「基本情報のコモディティ化」を加速させる一方、「実体験・独自知見・一次情報」の価値は逆に上昇。コンテンツ評価軸が「What(正しい情報)」から「Who & How(誰が、どう経験したか)」へ移行した。
- マーケティング責任者が今すぐ着手すべき「5つのアクション」について解説。

アグリゲーターは「情報を作る主体」ではなく、「他者が作った情報を集める器」です。強力なドメインパワーを持つため、これまで検索上位を独占しやすい傾向がありました。しかしGoogleの2026年3月コアアップデートでは、「情報について語るプラットフォーム」よりも「その情報を実際に所有・一次提供している企業(コンテンツオリジネーター)」を優先する方向に評価軸がシフトしたとAmsiveの分析は示しています。
1. 「コンテンツが何で作られたか」より「何を付け加えたか」:Googleが突きつける新評価軸
GoogleのNikola Todorovic氏(ソフトウェアエンジニアリングディレクター)とMartin Splitt氏はSearch Off The Recordポッドキャストで、AI Modeや AI Overviewsの時代にWebサイトはどうあるべきかについて議論しました。
発言の文脈:Todorovic氏の「AIを最善の方法で活用せよ」というアドバイスの核心は「コンテンツを量産すること」ではなく、「AIを使ってデータや競合をより深く分析し、ユーザーに提供できる価値をより正確に理解すること」でした。AI活用を「効率化」ではなく「洞察の深化」に使うことを推奨しています。
「情報のコピー」の価値がゼロになる:「インフォメーション・ゲイン」という概念
GoogleがAI Overviewsを検索結果のトップに表示するようになった今、エコシステム全体がAIとの共存に舵を切りました。AIは既存のWeb情報をマッシュアップし、「標準的な回答」を瞬時に生成することができます。その結果、「一般的に正しい情報をまとめること」の価値がゼロに向かっています。

Googleの評価軸がシフトしているのは「インフォメーション・ゲイン」つまり、「既存の情報にどれだけ新しい知見を付け加えられるか」という概念です。AIに代替されない価値を持つのは、以下の3つの要素です。
- 独自性(Originality):その企業にしか出せない一次情報・独自の調査データ・未公開の現場知見
- 専門性と経験(E-E-A-T):実体験に基づく知見、専門家による深い考察、失敗から得た洞察
- ユーザーへの深い最適化:AIを活用し、個々のユーザーの具体的な文脈に合わせた情報提供
「AIを使って記事を量産する」戦略の終焉
「AIを使って人間のような記事を大量生産する」戦略はもはや通用しません。Todorovic氏の提言は、AIを「効率化ツール」として使うのではなく、
- 「競合データの分析」
- 「コンテンツのリバース・ナレッジサーチ(自社記事がどんな検索クエリに答えられるかを逆算する分析)」
- 「ユーザーインサイトの深化」
に活用することを推奨しています。換言すれば、AIは「書く道具」ではなく「考える道具」として活用されるべき時代に入ったということです。
2. 2026年3月コアアップデートが示した「アグリゲーター終焉」の必然
2026年3月27日〜4月8日に実施されたGoogleの3月コアアップデートは、検索エコシステムの構造に大きな変化をもたらしました。Amsiveが2,000超のドメインをSISTRIX Visibility Index で分析したデータが、その実態を明らかにしています。
実際に起きた可視性の変動
| 業種 | 可視性が低下(代表例) | 変動幅 | 可視性が上昇(代表例) |
| 旅行・宿泊 | TripAdvisor / Yelp / Expedia | -33〜-45pt | Hilton / Hotels.com / NPS.gov |
| 求人・雇用 | Indeed / ZipRecruiter | -13〜-18pt | BLS.gov / Disney Careers(+59%) / CVS Careers(+45%) |
| 医療・健康 | WebMD / Mayo Clinic | -6〜-12pt | GoodRx(+55%) / NIH.gov(+9.3pt) |
重要な補足:RedditとIndeedは更新ウィンドウ中に可視性が低下しましたが、更新完了後に回復が確認されています。この表はアップデート期間中の変動スナップショットであり、長期的な最終的順位を示すものではありません(Amsive / Lily Ray氏の分析より)。
Googleが示した「本質的な意図」
Amsiveはこのパターンを「過剰にインデックスされていたUGC・アグリゲーターコンテンツに対する是正」と評価しています。「そのコンテンツについて語るプラットフォーム」ではなく「そのコンテンツを所有している会社」を優先するという方向性が鮮明になりました。
この変化は、単なるアルゴリズムの微調整ではありません。Googleが「情報の器(プラットフォーム)」よりも「情報の主(エンティティ)」を重視するという明確な意思表示です。

これまでは強力なドメインパワーを持つアグリゲーターにコンテンツを掲載すれば内容が多少薄くても検索上位を取れる「プラットフォーム・レバレッジ」が機能していました。しかし今、Googleは「誰がその情報を発信しているのか」という権威性と信頼性をより厳格に評価し始めています。
日本企業のマーケティングへの影響
日本市場においても、この影響は三つの形で現れます。
- 「まとめサイト・比較サイト」経由の流入減少:これまで自社製品を紹介してもらっていたアフィリエイトサイトや比較メディアの検索順位が下がることで、間接的なトラフィックやコンバージョンが減少するリスクがあります。
- 自社サイト(Owned Media)の重要性の再定義:「プラットフォームに載せておけば安心」という時代は終わりました。自社ドメインの公式サイトが顧客にとって最も信頼できる情報源として機能していなければ、検索結果から姿を消すことになります。
- サイテーション・エンティティ戦略の重要性向上:Googleに「この分野の権威は自社である」と認識させる外部からの言及(サイテーション)と、自社の信頼性をデータで証明するエンティティ強化がこれまで以上に重要になります。
3. キーワードの「断片化」が示す、検索の人間化
GoogleのLiz Reid氏はBloomberg Odd Lotsポッドキャストで、AI Modeや AI Overviewsが引き起こす検索行動の根本的な変化である、「キーワードの断片化(Keyword Fragmentation)」について説明しました。
AI検索普及による「検索の人間化」
Liz Reid氏の指摘の核心はシンプルです。
ユーザーは以前から「ビーガンメニューがあって5人用のパーティースペースがあるニューヨークのレストラン」のような複雑で具体的なニーズを持っていました。しかし、検索エンジンが短いキーワードしか処理できなかったため、ユーザーは自分のニーズを「ニューヨーク レストラン ビーガン」というキーワードに圧縮せざるを得ませんでした。

AI検索の普及は、その技術的制約を取り除きつつあります。ユーザーは今、自然言語で複雑なニーズをそのまま入力できるようになりました。これは「検索の人間化」とも言える変化です。
マーケティングへの2つの決定的影響
① キーワードの「死」と意図の「深化」:特定の単語を記事内に詰め込む技術的なSEOの重要性は低下し、ユーザーが「なぜその質問をしたのか」という背景(コンテクスト)を理解し、それに対する独自の洞察を提供できるかどうかが問われるようになっています。
② CVRの高いロングテール流入の拡大:検索クエリが断片化・具体化するということは、ユーザーの購買意図がより明確になった状態で検索が行われることを意味します。「AI検索時代のB2B企業のSEO組織体制の構築方法」のような超ロングテールクエリに答えられるコンテンツを持つ企業は、競合が追随できない高いCVRを実現できます。
例:「デジタルマーケティングとは」での流入は激減する一方で、専門的な課題解決型クエリ「AIに引用されるためのB2B向けスキーマ実装方法」)での流入の価値が相対的に高まります。ゼロクリック検索の増加と、CVRの高い流入の二極化という構造が進みます。
4. E-E-A-TのE(Experience)が最強のSEOになる理由
Martin SplittとNikola Todorovic氏の対談(Search Off The Record)では、もう一つの重要なメッセージが示されています。「AIは情報へのアクセスを民主化した。その結果、基本情報の価値は下がり、体験ベースの洞察の価値は逆に上がった」という逆説です。
E-E-A-Tの「E(Experience:実体験)」が追加された真の意味
Googleは2022年末、従来のE-A-T(専門性・権威性・信頼性)に「E(Experience:経験・実体験)」を追加しました。この追加は、AIが普及する前から「実体験に基づく情報の希少性」をGoogleが予見していたことを示しています。
コンテンツの価値基準が「What(何が正しいか)」から「Who & How(誰が、どう経験したか)」に移行したのです。

- AIができること:既存の知識をマッシュアップし、標準的な回答を生成する。テキストインプットから「正しい情報」を生成する
- 人間にしかできないこと:実際に製品を使い、失敗し、工夫し、そこから得た「主観的な洞察」「感情的な動き」「現場の泥臭いリアル」を記述すること
「現場人材」が最強のマーケティング資産になる
社内にいる技術者・営業担当者・カスタマーサクセスといった「現場の人間」が持つ知見こそが、AI時代最強のマーケティング資産です。彼らが顧客との対話で得た気づきや、プロジェクトの裏側にある苦労話、失敗から学んだ教訓が、SEOにおける強力な武器へと変わります。

同時に、「著者の人格」を可視化することも不可欠になりました。「誰が書いたか」を検索エンジンとユーザーの両方に明示することで、AIには模倣困難な「個人の権威性」を確立できます。著者プロフィールの詳細化・SNSとの紐付け・動画コンテンツの活用が有効な手段です。
5. 責任者がすぐ動くべき5つのアクション
4つの変化を踏まえ、今すぐ現場に指示できる具体的アクションを整理します。

| アクション | 内容・具体策 |
| ① 既存コンテンツの「情報増分」監査 | 自社記事とChatGPT出力を比較し、重複部分を洗い出す。一次情報・独自データ・事例が含まれるコンテンツを「保護」し、汎用情報のみの記事を「廃棄または強化」に仕分ける |
| ② コンテンツ制作フローの「取材型」転換 | 「構成→ライティング」から「社内専門家インタビュー→実体験抽出→ライティング」へ。社内の営業・CS・技術者が持つ現場知見をコンテンツの核に |
| ③ トピッククラスター戦略への移行 | ヘッドキーワード狙いのバラバラな記事群を廃止。特定テーマのピラーページを中心に、断片化したユーザーの悩みに答えるサテライト記事を相互リンクで束ねる |
| ④ 構造化データ・著者情報の徹底実装 | Schema.orgでPerson(著者)・Organization・FAQ・ProductなどをGoogleのAIに技術的に伝える。著者プロフィールにSNS・実績・写真を紐付けE-E-A-Tを可視化 |
| ⑤ 検索意図「再定義」ワークショップの実施 | 営業・CSが日々受ける質問を洗い出す。キーワードツールには出てこない「断片化された真のユーザーニーズ」を一つひとつFAQ・解説記事として具体化する |
各アクションの詳細解説
① 既存コンテンツの「情報増分」監査
自社の既存コンテンツが、ChatGPTなどの汎用AIが出力できる内容と重複していないかを点検してください。
「AIのリバース・ナレッジサーチ」として有効なのは、自社記事をAIに読み込ませ「この記事が答えられる検索クエリ一覧を出して」と指示し、それらが実際に自社にしか答えられない内容かどうかを確認することです。
記事内に「自社独自の調査結果」「顧客の成功事例(ケーススタディ)」「自社エンジニアや専門家のインタビュー」などの一次情報を必ず組み込むワークフローを構築します。
② コンテンツ制作フローの「取材型」への転換
これまでの「構成案作成→ライティング」というフローを捨て、「社内エキスパートへのインタビュー→実体験の抽出→ライティング」というフローへ移行してください。
記事の中に必ず「我々が実際に試した結果」「弊社顧客から寄せられた特有の悩み」といった一次情報に基づくセクションを必須項目として設定します。
また、単なる「お客様の声」ではなく、顧客が製品を導入する過程で直面した課題と乗り越え方のディテール(ストーリー)を深掘りした事例記事を増やしてください。
③ トピッククラスター戦略への完全移行
単一のキーワードを狙うのではなく、特定のテーマについて全方位的に深く網羅した「トピッククラスター」を構築してください。
中心となる「ピラーページ(柱となる網羅的記事)」を作り、そこから派生する「断片化されたユーザーの悩み(サテライト記事)」を数十パターン作成し相互にリンクさせます。
これにより、Googleに「このサイトはこの特定の専門領域における権威である」と認識させることが可能になります。
④ 構造化データ・著者情報の徹底実装
GoogleのAIが自社コンテンツを正確に理解し引用しやすくするための「機械向け」の最適化が不可欠です。Schema.orgを用いた構造化データの実装を、著者情報(Person)・組織(Organization)・レビュー(Review)・FAQなどに広げてください。
「この記事は信頼できる専門家によって書かれたものである」という証拠を技術的に明示することで、AIが引用するソースとしての信頼性を高めます。
⑤ 検索意図「再定義」ワークショップの実施
既存のキーワードリストを破棄し、顧客のカスタマージャーニーに基づいた「問い」のリストを作成し直してください。
営業担当者やカスタマーサポート部門が日々受けている「具体的な質問」をすべて洗い出します。それらはキーワードツールには出てこない「断片化された真のユーザーニーズ」です。
その一つひとつに丁寧に答えるFAQや解説記事を拡充することが、AI検索に最適化する最短ルートです。
「AIに選ばれるブランド」になるための現状把握から始める

本記事で解説した5つのアクションを実行するにあたって、「今自社がAI検索にどう認識されているか」を把握することが出発点です。GoogleのAI Overviews・ChatGPT・Geminiなどで自社ブランドがどう言及・引用されているかを可視化しなければ、どのアクションを優先すべきかの判断ができません。
グラッドキューブのLLMOA(エルモア)は、主要な生成AIにおける自社ブランドの認識状況と引用傾向を可視化し、GEO・LLMO施策の立案から実行・効果検証までをワンストップで支援するサービスです。
👇️ LLMOA(エルモア)の詳細はこちらから
まとめ:「本質的な価値」だけが生き残る時代へ
Googleによる「AI活用推奨」「3月コアアップデートによるアグリゲーター是正」「実体験コンテンツの価値向上」「キーワード断片化」これら4つの変化が示す方向性はすべて一致しています。「その企業にしか語れない、本質的な価値を持つ情報」だけが、AI検索時代に生き残るということです。
AIが「標準的な情報のまとめ」を代替する以上、私たちが闘うべき戦場は変わりました。キーワードの順位争いではなく、「AIが信頼できる情報源として自社を選ぶかどうか」という新しい競争が始まっています。
今こそ、コンテンツ戦略を根本から見直す絶好のタイミングです。小手先のテクニックが通用しなくなった今、「誰が、どんな経験から、何を語るか」という本質的な問いに向き合ったブランドだけが、AI時代のデジタルマーケティングを制することになるでしょう。
【参照・引用出典】
Google March 2026 Core Update: Winners, Losers & Analysis(Amsive):https://www.amsive.com/insights/seo/google-march-2026-core-update-winners-losers-analysis/
Google Advises Using AI In Best Possible Way For AI Search(Search Engine Journal):https://www.searchenginejournal.com/google-advises-using-ai-in-best-possible-way-for-ai-search/573671/
Google’s March Core Update Shifted Visibility Away From Aggregators(Search Engine Journal):https://www.searchenginejournal.com/googles-march-core-update-shifted-visibility-away-from-aggregators/573621/
Google: AI Makes Human Experience More Important For Content(Search Engine Journal):https://www.searchenginejournal.com/google-ai-makes-human-experience-more-important-for-content/573862/
Google On Keyword Fragmentation And User Needs In AI Search(Search Engine Journal):https://www.searchenginejournal.com/google-on-keyword-fragmentation-and-user-needs-in-ai-search/573834/


