検索ボリュームの29%が減少中|100万キーワード調査レポートが示す「消える検索」と「AI経由で来る顧客」の正体

検索ボリュームの29%が減少中|100万キーワード調査レポートが示す「消える検索」と「AI経由で来る顧客」の正体

【記事の要約(ここだけでもポイントは掴めます)】

  • Fractl(コンテンツマーケティング会社)とSearch Engine Landが101万件・354億検索のキーワードを分析。2026年4月時点で全体の29%の検索ボリュームが減少中(ガートナー 2024年予測の25%を4ポイント上回る)。ただし「検索総量は横ばい」であり、消えたのではなく別のキーワードへ移動している。
  • 業種格差が大きい。FinTech -37.7%、HealthTech・Wellnessも25%超の減少(情報を知れば完結するカテゴリ)。一方でSaaS・Lifestyle・Insuranceは15%台の減少にとどまり、キーワード件数ベースでは成長が減少を上回る(SaaS 2.5倍、Lifestyle 2.6倍)。「AI検索崩壊論」をそのまま自社に当てはめる前に、自社業種での数字を確認する必要がある。
  • 米国消費者調査(1,004人)が示す購買行動の変化:AIを使う人は70%増えたが、検索をしなくなった割合は17%59%がAIでブランドを推薦された後にサイトを訪問し、18%はAIの推薦のまま未検証で購入した経験を持つことがわかった。「AI回答の中に登場すること」が新しい流入経路になりつつある。

本調査の出典元について

本調査はFractl(コンテンツマーケティング会社)のKelsey Libert氏(共同創業者)がSearch Engine Landに寄稿した一次調査レポートです。調査データの分析・解釈はFractl側が行っており、使用データはSemrushが提供するキーワードボリュームデータです。

透明性について:Search Engine Landは「Semrush」が所有するメディアです。原文にも「調査者はSemrushについて言及を求められていない」という開示がされています。調査の方法論・数値自体の信頼性は高いですが、「Semrushのデータを使った調査をSemrush傘下のメディアで発表した」という文脈を念頭に置いた上で参照することをお勧めします。

1. 調査概要:ガートナー予測の「答え合わせ」

2024年2月、ガートナーは「AIチャットボットの普及により、従来型検索エンジンの検索ボリュームは2026年までに25%減少する」と予測しました。

FractlとSearch Engine Landは、この予測を検証するため2つのデータソースを組み合わせた大規模調査を実施しました。
結果は、ガートナーの予測を4ポイント上回る「29%の減少」という数字でした。ただし、この数字が示す本当の意味は「検索が消えた」ではなく「どのキーワードが月間何回検索されるかの分布が変わった」という点にあります。

📊 調査の基本情報

  • 対象キーワード:1,010,848件(月間1万回以上の検索回数の多いキーワードのみ)
  • 対象ブランド:8業種・379ブランド(FinTech・HealthTech・Wellness・Travel・Education・Insurance・SaaS・Lifestyle)
  • 合計検索ボリューム:月間354億回
  • 測定方法:2026年4月時点での前年比変化(15%超の減少=「減少」、15%超の増加=「成長」)
  • 併走調査:米国消費者1,004人へのサーベイ(52%女性・46%男性・49%ミレニアル・中央値41歳)

2. 検索ボリュームの影響は業種によって異なる

本調査の検索ボリューム全体が「-29%減少」という数字をそのまま自社に当てはめるのは危険です。なぜなら、業種によって検索の減少幅は大きく異なります。

業種検索ボリューム変化ひとことで言うと
FinTech(金融テック)-37.7%最も大きな減少。投資・保険・金融情報はAIで完結してしまう
HealthTech(ヘルステック)-25%超症状・薬の説明などAIで完結。次の検索・クリックが発生しにくい
Wellness(健康・美容)-25%超情報収集で終わるクエリが多く、購買につながらないケースが増加
Travel(旅行)横ばい情報はAIに奪われるが、予約という行動は検索・直接訪問が継続
Education(教育)横ばい学習・調査はAIへ移行、学校・コース比較は検索が残る
Insurance(保険)-15.2%最も小さな減少。比較・見積もり・申し込みという取引行動が検索を支える
SaaS(ソフトウェア)-15〜19%キーワード件数ベースでは成長48% vs 減少19%。AI推薦後に指名検索が発生するため需要が維持
Lifestyle(ライフスタイル)-15.2%キーワード件数ベースでは成長40% vs 減少15%。購買前の再検索が多く需要が維持

この差を分けているのは「チャットボットが完全な答えを返せるかどうか」です。「薬の相互作用」「保険の免責金額の説明」「投資ファンドの概要」など、こうした「情報を知れば終わり」のクエリ(knowクエリ)は、チャット画面の中で完結し、検索に戻ってきません。一方、価格比較・購入手続き・特定サイトへの到達が必要なカテゴリでは、検索需要が維持されています。

日本企業への提言まず、自社でコンテンツマーケティングを実施しているカテゴリが「情報完結型」か「取引型」かを判断することが先決です。「know系クエリ」のカテゴリがセッション減少をしていくことは火を見るより明らかであるため、いかに「取引」に関連するカテゴリ(料金/他社比較/特徴/顧客の声/よくある質問)などのコンテンツマーケティングに注力をすべきです。

3. 最重要データ:月間検索回数自体は「ほぼ横ばい」

本調査で最も注目すべき発見は検索自体の「総量はほぼ横ばい」という事実です。

区分キーワード件数月間検索回数平均変化率
減少中(15%超の下落)285,489件(40.7%)約102.9億回平均-41%。
4割超を失ったキーワードが112,378件。
安定(±15%以内)残り(39.2%)前年比ほぼ横ばい
成長中(15%超の増加)140,835件(20.1%)約103.1億回キーワード件数は少ないが、「1件あたりの月間検索回数が大きい(クエリが長文化している)
純変化(全体)+1,680万回(=ほぼゼロ)総量は変わらず「どのキーワードに検索が集まるか」が変化した

「キーワード件数」で見ると、全体の40.7%が減少中、成長しているのは20.1%にすぎません。つまり、キーワードの件数では「減少」が圧倒的多数です。ところが、成長側のキーワードは1件あたりの「検索回数」が大きいため、総量ではほぼ釣り合っています。

つまり検索需要自体は減少したのではなく、「変化しただけ」といえます。業種別に成長と減少の比率を見ると、需要の新しい行き先が見えてきます。

  • Lifestyle:成長40% vs 減少15%(購買前の再検索が多く需要が維持/成長上回り)
  • SaaS:成長48% vs 減少19%(AI推薦後に指名検索が発生/成長上回り)
  • HealthTech:減少-25%(薬の相互作用・症状の説明などがAIで完結唯一の逆転。最も構造変化が進む業種)

SaaSとLifestyleがAIに「狙われやすい」のに成長している理由:AIがプロジェクト管理ツールやソファを推薦すると、多くの人は購入前にそのブランド名や販売店を検索します。AIの回答が下流の指名検索を生成するのです。これはHealthTechやFinTechでは起きません。薬の相互作用への回答はチャット内で完結し、「次のクリック」が発生しないためです。

4. 月間検索回数の90%が「非ブランド検索」

AIチャットボットに最も置き換えられやすいのは、ブランド名を含まない「非ブランド検索」です。

SEOでいうところの「know」系のクエリで、ブランド名がないクエリには「到達すべき特定のサイト」が存在しないため、やり取り全体がチャット画面の中で完結してしまいます。

  • データセット全体の検索ボリュームの90%が「非ブランド検索」
  • 最も露出が高いのはHealthTech(99.6%)とWellness(98.5%)
  • Insurance(73.8%)とSaaS(82.0%)は相対的に低く、かつ両業種とも全体として成長中

自社カテゴリのクエリが「AIが完全な答えを返せる情報完結型」であれば、必要なのはSEO戦略だけではありません。
「AI回答の中に登場すること」すなわちGEO(Generative Engine Optimization)が戦略の中心になります。

5. 消費者調査が示す「頭の中で起きていること」

キーワードデータが「インデックスで起きていること」を示すのに対し、米国消費者1,004人への調査は「人々の行動と意識」を示します。

AIは増えたが、検索を捨てた人は少ない

  • 70%がAIの利用を増やしたが、従来型検索を減らした人は17%にとどまる
  • 35%は「AIで検索を置き換えたものはまだ何もない」と回答
  • 検索行動の多極化:YouTube(68%)・Reddit(57%)が「検索エンジンとしてのSNS」を牽引。Instagram(42%)・Facebook(40%)・TikTok(33%)が続く

「AIか検索か」の二者択一は、消費者の実態とずれています。実際に起きているのは、Google・AI・YouTube・Redditが並列に使われる「検索の多極化」です。YouTubeとReddit(日本ではNote等も)はGoogleにもインデックスされるため、これらへの露出はSEO効果も複合的に高まります。

「新しいファネル」を示す3つの数字

マーケティング戦略会議に持ち込む価値がある数字が3つあります。

📊 消費者調査の重要データ3点

  • AIチャットボットがブランドに言及・推薦した後、「そのブランドのサイトを訪問する可能性が高い」と答えた消費者の割合:59%
  • AIの推薦を別の検索で検証せずにそのまま購入した経験を持つ消費者の割合。Z世代・ミレニアルはベビーブーマーの2.5倍(20% vs 7%):18%
  • 購買リサーチをAIチャットボットから始める人の割合(従来型検索とオンラインリテールは各47%で並立):13%

特に「18%の未検証購買」は見逃せません。ブランドが検索経由のタッチポイントを一度も持てないまま購買が完結する、まったく新しい購買行動です。この土俵に立つ条件はただひとつ、「チャットボットが返す名前の一つになること」です。

一方で消費者はAIを無条件に信頼しているわけではありません。AIの商品推薦に「多少なりとも懐疑的」な人は56%。信頼度では「検索の方を信頼」が46%、「AIの方を信頼」は20%です。「AIに候補出しを任せつつ、購入前には検索で検証する」これが現在の標準的な行動様式です。

6. 5年後もGoogleは主役。ただし「去る20%」を無視できるか

「5年後もGoogleが主要な検索ツールか」という問いには、52%が「はい」(確実17%・おそらく35%)、27%が「わからない」、20%が「おそらく・確実に使わなくなる」と回答しました。

AIを好む理由の上位は「複数ソースの要約が優れている」(21%)・「速く直接的な答え」(20%)・「会話形式で追加質問できる」(19%)。逆に検索へ戻る条件のトップは「AIの回答が信頼できなくなったとき」(35%)でした。AIシフトの持続性は、AIが規模を拡大しながら信頼を維持できるかにかかっています。

「去る20%」は多数派ではありませんが、誤差でもありません。今日すべての戦略を彼らに合わせて作り直す必要はない。しかし、彼らがすでにいる場所に自社が現れる準備は、今日から始める必要があります。

7. 日本企業のマーケティング責任者が今すぐ考えるべき3つのこと

① 「自社版・需要移動マップ」を作る

自社サービス・ブランドの「カテゴリ別」検索クエリを計測しましょう。

  • 「①AIによって完結されるクエリ(knowクエリ)」
  • 「②自社サイトまで流入が発生するクエリ(Go/Doクエリ)」
  • 「③AIによってブランド言及されているクエリ(Buyクエリ)」

まずは、Google SearchConsole などで計測している検索クエリを種別ごとにフィルタリングし、注力すべきクエリ群を特定しましょう。

② 「非ブランド依存度」をKPIにする

流入のうちの何%が「非ブランド検索」に依存しているかを把握してください。この比率が高いほど、AI検索時代においては影響を受けやすくなります。

逆に言えば、AIの回答が生む「下流の指名検索」が頻出するブランドは、AIを新しい流入経路に変えられます。「指名検索を生む力=ブランド力」が、そのまま市場での競争力になります。

③ GEO対策を「主要チャネル」として予算化する

本調査結果である「59%がAI言及後にサイトを訪問する」とすれば、AI可視性を高めることが、獲得チャネル開拓として予算を確保し、対策を進めるべきです。

※当社のLLMOA(エルモア)では、AIから「ブランド名・サービス名」が言及された「可視性スコア」を把握することが可能です

また、本調査では、AI回答への掲載を左右する要因として「アーンドメディア(信頼できる第三者からの言及)」「エンティティシグナル」を挙げており、インターネット上でのPRとGEOは切っても切り離せないものになっています。広報とマーケティングが別部署のままでよいのか?という組織設計の見直しも論点になります。

AIが自社をどう認識しているか、今すぐ可視化する

「AI回答の中に登場すること」が新しい流入経路になりつつある今、まず把握すべきは「現在、主要なAIが自社をどう認識しているか」です。グラッドキューブのLLMOA(エルモア)は、ChatGPT・Gemini・AI Overviewsなど主要な生成AIが自社ブランドをどう認識・引用しているかを可視化し、GEO施策の立案から実行・効果検証までをワンストップで支援します。

まとめ:「負けるブランド」と「勝つブランド」の分岐点

本調査を読み解くと、AI検索時代の一つの「解」が見えてきます。

負けるブランドは「AIがうまく回答できるクエリ」への最適化を続けています。一方、勝つブランドは、Googleや他のLLMの回答チャットボットから、「自分自身が答えになる」だけの権威性を築いています。

ガートナーの「25%減」予測は方向性として正しく、現実はそれよりも急でした。しかし検索の総量はほぼ横ばいであり、変わったのは「どのキーワードに検索が集まるか」です。検索自体は消えません。ユーザーが疑問を持たなくなることはないからです。問われているのは、その移動先に「自社がいるかどうか」です。


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→ 59%がAI言及後にサイト訪問という本調査のデータを戦略に落とし込む際の基礎概念。

【AI時代のブランディング】【AI時代のブランディング完全ガイド】ゼロクリック時代に「選ばれるブランド」を作るための戦略と実践

【AI時代のブランディング完全ガイド】ゼロクリック時代に「選ばれるブランド」を作るための戦略と実践

→ 「AI回答の中に登場すること=新しい検索順位」という本記事の結論を実践に変えるための戦略論。

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【参照・引用出典】

What 1 million keywords reveal about AI’s impact on search(Search Engine Land / Kelsey Libert, 2026年7月2日):https://searchengineland.com/what-1-million-keywords-reveal-about-ais-impact-on-search-481474

Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents(Gartner, 2024年2月19日):https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2024-02-19-gartner-predicts-search-engine-volume-will-drop-25-percent-by-2026-due-to-ai-chatbots-and-other-virtual-agents