【記事の要約(ここだけでもポイントは掴めます)】
- Spotifyはこの1年間、広告事業の立て直しに取り組んでいる。きっかけはCEO Daniel Ek氏が2025年に語った「広告事業の動きが遅すぎる」という反省(Business Insider報道)。Spotify Ad Exchange(運用型広告プラットフォーム)の構築・生成AIによる音声広告制作ツールの展開・自動化された購買フローへの刷新を進めている。
- Spotifyの広告戦略は「High-Impact Sponsorships(文化との接続を担うブランド向け施策)」と「Scaled Biddable Channels(自動化・パフォーマンスを求める広告主向け施策)」という2つのエンジンで構成される。2026年Q1時点で運用型広告は広告事業全体の3分の1以上を占め、アクティブ広告主数は前年同期比+68%と成長している。
- Spotifyの強みの根幹はログイン必須のファーストパーティデータと、自社開発のSpotifyピクセルによるクローズドループの計測能力。ポストクッキー環境において、この「ログイン型データ」は競合に対する優位性となる。
📬 INSIGHT CUBEの最新情報をいち早く受け取る
INSIGHT CUBEでは、当社一次情報によるコラムやエージェンティック・コマース、AI検索の最新動向など、デジタルマーケティング責任者が押さえておくべき最新情報を継続的にお届けしています。いち早く情報をキャッチアップし、限定のコンテンツを受け取りたい方はニュースレターへのご登録、SNSでのフォローを是非お願いいたします。
📩 ニュースレターに登録する | 𝕏 Xでフォローする | f Facebookでフォローする
1. なぜ今、Spotifyは広告事業の「再構築」を急いだのか

先日、INSIGHT CUBE では、EC プラットフォームの巨人である Shopify が広告事業への進出を宣言した記事を公開しました。
続いて、今回は 音楽配信プラットフォームの筆頭である「Spotify(スポティファイ)」が広告事業への展開をしていくことを宣言しました。
Spotifyの広告ビジネスはこれまで、音楽やポッドキャストという「音声コンテンツ」への特化を強みとしてきました。しかし運用型広告の台頭とポストクッキー時代の到来は、広告主が求めるものを変えました。
「効率的でクロスチャネルな投資先」を求める企業にとって、従来のSpotifyは相対的に「買いにくく、成果が見えにくい」プラットフォームでした。
Spotify CEO のDaniel Ek 氏は2025年、自社の広告事業について「動きが遅すぎる」と語ったと報じられています(Business Insider, 2025年8月)。これを受け、Spotifyはこの1年間、広告技術スタックの全面的な見直しに着手しました。
INSIGHT CUBE 編集部補足:Spotify は既存のAds Managerを強化しつつ「Spotify Ad Exchange」という、音声広告を含めたプログラマティック取引の新しい基盤を構築するという、段階的な再構築を目指しています。

2. Spotify Ad 広告戦略の核心:「2つのエンジン」モデル

2026年5月のSpotify Investor Dayで会社が説明した戦略は、ドラフト記事にあった「三本柱」とは異なる、より明確な「2エンジン」構造です。
| エンジン | 対象 | 特徴 |
| High-Impact Sponsorships | 文化・ファンダムとの接続を求めるブランド | ライブイベント・スポンサードプレイリスト・ポッドキャストのホストリード等 |
| Scaled Biddable Channels | 自動化・パフォーマンスを求める広告主 | Spotify Ads Manager(セルフサーブ)とSpotify Ad Exchange(プログラマティック) |
Spotify 公式の説明によれば、セルフサーブの「Spotify Ads Manager」は広告主に対し、Spotify の優良在庫・クリエイティブツール・計測機能への直接アクセスを提供する一方、「Spotify Ad Exchange」はプログラマティックバイヤーに対し、既存のプログラマティック購買フローを通じたアクセスを提供する役割分担になっています。
「私たちはその配管(plumbing)を構築した。ブランドが私たちのシグナル・フォーマットにアクセスし、Spotifyがメディアミックス全体の中でどのように機能しているかを理解できるようにしたいだけだ。」——Brian Berner, VP of Advertising Partnerships, Spotify(Digiday Podcast, カンヌライオンズ2026にて)
3. Spotify Ad Exchange :AIによるクリエイティブ制作の自動化

音声広告制作の最大の参入障壁だった「制作コスト・スピード」を解消するため、Spotifyは Ads Manager 内に生成AIツールを組み込んでいます。Spotify公式のヘルプセンターによれば、このツールでは広告主がプロンプトを入力するだけで最大500語のスクリプトを自動生成し、北米・英国アクセントを含む複数の音声モデルからAIボイスオーバーを生成、さらに無料のロイヤリティフリー音源で背景音楽をミックスできます。

Spotify Ad Exchange の主なAIクリエイティブ制作(2026年6月29日 時点)
- AIスクリプト生成(AI Script Generation):広告主がプロンプトを入力すれば最大500後語の広告スクリプトを即座に生成。ブランドセーフティ・広告ポリシー準拠のガードレールを内蔵。
- AI音声ナレーション(AI Voiceovers):複数の音声モデル・トーンから選択可能。発音の微調整や複数テイクの生成にも対応。
- 背景音楽のミックス(Background Music:):ロイヤリティフリー音源または自社音源のアップロードに対応。
- ダウンロード機能(Download Capabilities):広告主は生成した音声広告をダウンロードし、Ads Manager・Spotify Ad Exchange・Direct IOの複数のチャネルで利用可能。
INSIGHT CUBE 補足:2026年6月29日 時点での情報となります。今後さらにAIオーディオ広告クリエイティブには機能が追加される可能性があります。最新の情報はこちらのページから確認してください。
4. Spotify 動画広告・没入型フォーマットへの投資

Spotifyにおける動画コンテンツへの投資も進んでいます。ビデオポッドキャストや、音楽視聴中の動画広告枠の拡充により、YouTubeやInstagramが強みとしてきた「動画広告予算」の一部を取り込む狙いがあります。Brian Berner氏は次のように説明しています。
「私たちの動画・ハイインパクトなスポンサーシップ・体験の中で多くの成長が起きているのを見ている。だがそれは音声を犠牲にしているのではなく、加算的(additive)なものだ。」——Brian Berner, VP of Advertising Partnerships, Spotify
Spotifyは音声企業としての強みを手放すのではなく、動画・ライブイベント・体験型コンテンツを「追加」していくという立場を明確にしています。eMarketerの予測によれば、米国のポッドキャスト広告市場は2029年までに年間で約10億ドル規模の成長が見込まれており、音声広告自体の市場拡大も同時に進行しています。
5. 注目:なぜSpotifyのデータは「強い」のか

Spotifyの広告インフラとしての強さの根幹は、ログイン必須のユーザー基盤にあります。Spotifyはサービスの利用に会員登録を必須とするため、多くのユーザーが実名・年齢・位置情報・音楽の好みと紐づいたファーストパーティデータとして管理されています。
ポストクッキー環境において、このログイン型ファーストパーティデータは競合に対する優位性になります。Brian Berner氏は、計測面での強みについて次のように述べています。
「私たちの専門性は1P(ファーストパーティ)の計測にある。Spotifyピクセルが私たちの大きな注力分野になっているのは、それによってより良いクローズドループでのコンバージョン理解が可能になるからだ。」——Brian Berner, VP of Advertising Partnerships, Spotify
6. 数字で見るSpotify広告事業の成長

| 指標 | 内容 |
| 運用型広告(Scaled Biddable Channels)の比率 | 広告事業全体の3分の1以上を占める(2026年Q1時点) |
| アクティブ広告主数の成長 | 前年同期比+68%(2026年Q1) |
| 欧州・中東・アフリカ(EMEA)の成長 | 前年同期比約+10% |
| ラテンアメリカの成長 | 前年同期比+25% |
| 米ポッドキャスト広告市場の成長予測 | 2029年までに年間約10億ドル増加(eMarketer予測) |
Spotify自身は2026年下半期にさらなる成長率の向上を見込んでおり、長期的には二桁成長を継続する事業へと拡大させる計画を示しています(Spotify 2026年Investor Day)。
7. 日本のマーケターへの示唆と実践アクション

- メディアミックスの再評価:「Spotify=音声広告の代替」という認識を改め、YouTube/SNS動画広告と同様の指標(CPV・CTR・CPA)で評価・比較検討の対象に加える
- 生成AIクリエイティブツールでの小規模テスト:Ads Manager内のAI機能を活用し、制作コストをかけずに音声広告のクリエイティブバリエーションを検証する
- 動画・ハイインパクト広告枠への早期検討:ビデオポッドキャストやスポンサードプレイリストなど、文脈親和性の高い広告枠は競合が少ない段階での参入機会になりうる
- Spotifyピクセルでの計測設計:自社のコンバージョン計測体制にSpotifyピクセルを組み込み、ポストクッキー時代における計測の選択肢として検証する
オーディオ・動画広告を含むメディアミックス戦略を支援
Spotifyのような新興プラットフォームをメディアミックスへ組み込む際は、既存チャネルとの比較評価軸の設計が重要になります。グラッドキューブのインターネット広告運用支援では、新興AI・オーディオ広告プラットフォームを含めたメディアミックスの設計・効果検証をトータルで支援します。
👉 インターネット広告運用支援:https://www.glad-cube.com/

まとめ:「机上の自動化」ではなく「地道な再構築」が進んでいる

Spotifyの広告事業の変化は、派手な「リブランド」というより、CEOの反省を起点とした地道なアドテクの再構築です。「AIによるクリエイティブ制作の高速化」「Spotify Ad Exchangeによるプログラマティック対応」「ファーストパーティデータを軸にした計測の強化」これらが組み合わさることで、Spotifyは音声広告という強みを失わずに、より多くの広告予算を取り込もうとしています。
自動化とAIを取り込んだ広告プラットフォームへの早期理解こそが、次世代の消費者の「耳と目」を確保する手段の一つになります。Spotifyを検討リストに加えるタイミングを見極めるためにも、地に足のついた最新動向の把握が重要です。
📬 INSIGHT CUBEの最新情報をいち早く受け取る
INSIGHT CUBEでは、当社一次情報によるコラムやエージェンティック・コマース、AI検索の最新動向など、デジタルマーケティング責任者が押さえておくべき最新情報を継続的にお届けしています。いち早く情報をキャッチアップし、限定のコンテンツを受け取りたい方はニュースレターへのご登録、SNSでのフォローを是非お願いいたします。
📩 ニュースレターに登録する | 𝕏 Xでフォローする | f Facebookでフォローする
【参照・引用出典】
Spotify rebuilds ad business around automation, AI to secure bigger media budgets(Digiday / Kimeko McCoy, 2026年6月24日):https://digiday.com/podcasts/spotify-rebuilds-ad-business-around-automation-ai-to-secure-bigger-media-budgets/
How Spotify’s Rebuilt Ad Platform Is Delivering New Value for Brands(Spotify Newsroom, 2026年5月21日 Investor Day):https://newsroom.spotify.com/2026-05-21/investor-day-ads-business-growth/
Spotify Unveils New Advertising Partnerships and Product Updates(Spotify Newsroom, 2025年10月1日):https://newsroom.spotify.com/2025-10-01/advertising-partnerships-product-updates/
Generative AI Audio Ad Creation(Spotify Ads Help Center):https://adshelp.spotify.com/s/article/Generative-AI-Audio-Ad-Creation-US?language=en_US
Cannes-terview: Why Audio Ad Spend Still Lags, According To Spotify’s VP Of Product(AdExchanger):https://www.adexchanger.com/technology/cannes-terview-why-audio-remains-perennially-underinvested-according-to-spotifys-chief-product-officer/


